海外営業とは

「海外営業」というベタな言葉は、転職サイトでは募集職種を表す際に用いられていますが、これを詳しく解説しているサイトは、そう多くはありません。

 

 また、市販の貿易実務に関する書籍や、貿易実務の解説を行っている多くのホームページは、「手続きとしての貿易実務」を淡々と解説しているものが多く、海外販路開拓・海外営業の立場から貿易実務を説明するものはあまり見かけません。

 

 このサイトは中小企業の皆様に、 実践的な海外販路開拓情報・海外営業情報を提供することを目的としています。また、海外営業職への転職を目指す方やAIBA認定貿易アドバイザーを目指す方への情報提供も併せて行ってゆきます。

海外マーケティング、海外営業、海外販路開拓、貿易実務の違い

 このサイトでは「商品の輸出」を前提として、下記のように定義しています。(諸説あり)

 

(1) 海外マーケティング

海外マーケティングとは、誰に、何を、どのように売るか、自社を選んでいただくかの仕組みつくり。

働きかける相手は海外の企業。

 

(2) 海外営業

海外営業とは、日本国内の事業所での執務をメインとし、適宜海外出張を行いながら、わが国からの輸出の形で製品・商品を海外向けに販売する事業活動とします。また、越境ECの展開や、日本国内から3国間貿易をコントロールする場合も含めます。

一方、海外事務所・現地法人等を拠点とし、海外において日本製品の販売活動を行うパターン(直接投資)は、このサイトでは力点を置いていません。

 

(3) 海外販路開拓

マーケティング4Pの中の「Place」 を発掘、拡大させること。

ゼロから輸出を始めるため、A国向けのみだった輸出を他国にも展開するため、A国向け出荷数量や出荷金額をアップさせるためなどに行う場合を含みます。

 

(4) 貿易実務

貿易実務とは、営業がとってきた契約に基づき、貨物や商品を海外向けに出荷し、代金を回収する一連の手続き。

 

ただし、これらの間には必ずしも明確な境界線はなく、それぞれが他の場面においてもオーバーラップしてくるなど、密接な関係にあります。  

海外展開の9つのステップ

(1) 結果的に「輸出」

自社は特段「輸出する」という認識は持っていない。

例えば、純粋な国内販売として取引先メーカーに販売した自社部品が、取引先メーカーの機械に組み込まれて、取引先メーカーが輸出する形態。 

(2) 商社経由輸出 (間接輸出)

自社から見ればあくまでも日本国内の取引。商社の海外ネットワークを通じて販売する。

メリット:

・自社での販路開拓の負荷が軽減できる。

・為替変動や与信のリスクは少ない。

デメリット:

・商社のコミッション等を載せても販売しうる価格構成設定する必要上、商社への売値は多くを望めない。

・商品が海外へ出荷されることが前提なので、仕様や梱包などで国内とは違う対応が必要な場合がある。

・商社というワンクッションが入るので、エンドユーザーの動向がリアルタイムに把握できない。 

(3) 直接輸出 

海外のエンドユーザー(またはDistributorを希望するもの)から直接注文を受け、自社が輸出者となって海外のエンドユーザーに直接販売する形態。近年は越境 eコマースによる輸出も進展している。 

(4) Distributor経由輸出

・現地の輸入商社や輸入問屋などから直接注文を受け、自社が輸出者となって、これら現地の商社や問屋などに継続的に出荷する形態。

現地の商社や問屋などは、輸入後に現地得意先に転売するか、しばらく在庫として抱えて販売してゆく。

(アメリカの様に、現地での販売・商談はセールスレップが行い、契約はエンドユーザーと自社とが直接行い、セールスレップにはコミッションを支払う形態もある。)

・日本からは定期的に出張してDistributor周りをするのが通常。従って事務所等の設備は持たないのだが、現地税務当局が税収確保のため、ある意味言いがかりをつけて"出張者"をPE認定し、出張者所が関係する商売について課税されてしまう場合がある。

----このサイトでは、おおむね上記(2)~(4)を対象としています。---- 

(5) 現地駐在員事務所

・駐在員事務所は、「売った買った」の直接の当事者にはならない。現地エンドユーザーや現地Distributorと国内本社との情報伝達、現地マーケットの情報収集等を行う。 

・営業は行えない前提なのでPEとしては扱われず、課税されないのが原則。しかし、現地税務当局が税収確保のため、ある意味言いがかりをつけてPE認定され、駐在員事務所が関係する商売について課税されてしまう場合がある。

(6) 現地支店

国内本社の出先として営業活動

国内の名古屋支店、大阪支店と同列のものが、海外にあるという位置づけ。本社の日本での税務申告とは別に、海外現地でも税務申告が求められ、納税義務がバッティングするので「外国税額控除制度」を利用する。

(7) 現地販売会社

・現地に自社100%、あるいは現地企業と合弁で自社の販売会社を設立する。国内本社は現地販売会社にあてて商品を出荷する。現地販売会社は輸入後に現地得意先に転売するか、在庫として抱え販売してゆく。

・日本の親子会社から海外の子会社に製品を卸す取引が、他の現地資本のDistributorより安く設定されている場合、日本の親会社の利益は通常より少なくなるので、利益が海外に移転しているという整理になる。そして、通常の第三者との取引による取引価格(独立企業間価格:ALP, Arm's Length Price)で行われたものとみなして所得を計算し、実態と乖離している場合に日本の税務当局から課税される場合もある。これを移転価格税制という。

・逆に、海外の子会社が日本の親会社に製品を出荷する取引が、海外子会社が他の企業に販売するより藻やk酢設定されている場合、海外子会社の利益は通常より少なくなるので、現地政府から見れば利益が日本に移転しているという整理になる。この場合は、現地税務当局から海外子会社が課税される場合もある。

(8) 現地生産

・現地に生産拠点を設立し、現地国内や現地からの輸出を行う形態。 

・日本の親会社が所有する特許権や製造ノウハウを子会社に提供してそのロイヤリティを徴収する場合、それが不当に高いとして現地税務当局から移転価格とされ、独立企業間相当を超過する部分は損金算入が認められない場合がある。

・また、そのロイヤリティに対して現地で源泉徴収される場合もある。

(9) 国際的なサプライチェーン構築

・サプライチェーン・マネジメント

・EPA,FTAなどの活用

管理人について

商社の産業機械部で海外営業を担当後、東南アジアに駐在。アセアン地区の現地ディストリビューター統括とシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンなどの現地エンドユーザーへの営業活動を行う。 

帰国後は中堅医療機器メーカーの国際営業部門に転職。華僑系代理店、インド代理店と丁々発止を繰り広げた後に海外マーケティング部門に異動。代理店会議、ユーザーズミーティング、海外展示会ブース設営、英文カタログ・ニュースレター作成などを行う。

その後産業資材系の中小製造業に再転職。前職までは財務部や受け渡し部が行っていたような、ベタベタの貿易手続きを全て一人で行う。具体的にはカートンボックスへのケースマーク貼り付けから原産地証明の取得、荷為替手形のタイピングからB/L揚げ、さらにはL/Cネゴの銀行持込、取り扱い説明書の英訳や英文ホームページの立ち上げまで。

その後さらに団体職員として勤務、国際渉外業務に従事。アセアン地区の業界団体との折衝、国際標準化アグリーメントの日本側窓口事務局を担当。 

商社マン、現地駐在員、メーカーでの海外営業・マーケティング、中小企業での海外部門、そして現在は団体職員として海外渉外という、異なる立場で海外ビジネスを経験し、貿易コンサルタントとして独立。

 

保有資格 :         

中小企業診断士、   通関士(試験合格)、 AIBA認定貿易アドバイザー

貿易実務検定(新)A級、 CISTEC STC Expert(安全保障貿易管理士(総合))

行政書士(試験合格)

免責事項

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