国際税務

1.日本の企業が現地ディストリビューターに輸出して得た所得については日本で課税される。

2.日本の企業が現地に支店を設け、支店を通じて得た所得については、日本本社の所得として日本で課税されるとともに、下記の「恒久的施設」として現地でも課税される。現地で課税された場合は、下記、「外国税額控除」により日本側で救済される。

3.日本の企業が現地に子会社を設けた場合、子会社の所得については、原則日本では課税されない。(下記、外国子会社合算税制が適用される場合を除く。)

租税条約

 

「租税条約は、課税関係の安定(法的安定性の確保)、二重課税の除去、脱税及び租税回避等への対応を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進に資するものである。

租税条約には、国際標準となる「OECDモデル租税条約」があり、OECD加盟国を中心に、租税条約を締結する際のモデルとなっている。OECD加盟国である我が国も、概ねこれに沿った規定を採用している。

(出所:財務省HP http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/h07.htm)

 

国際的二重課税を排除する方法

1. 国外所得免除方式

 その法人の国外で生じた所得には課税せず、国内で生じた所得のみに課税する。

   日本はこの方式を採用していない。

 

 日本本社                         海外支店

 所得              100   所得         50     

   海外支店の所得   0

   ----------------------        ---------------

   所得合計   100           所得          50

   法人税率        40%          法人税率      20%  

   税額       40          税額           10

   納付税額     40  

 

2. 外国税額控除方式

・我が国の内国法人の所得については、国外・国内を問わず課税すること原則とする。

 その上で、国外の所得について国外で納付した税金については、わが国で納付すべき法人税額の範囲内で、

 控除することを認める。

・わが国においては、内国法人の外国支店等が外国で納付した外国税額を控除する外国税額控除が

 認められている。

・租税条約を締結していない国との間であっても、適用される。

控除限度超過額や、控除余裕額がある場合は、3年間繰り越すことが出来る。

 

  日本本社                          海外支店

 所得              100     所得         50     

   海外支店の所得 50

   ----------------------        ---------------

   所得合計   150           所得          50

   法人税率        40%           法人税率      20%  

   税額      60 (B)        税額           10(A)

   外国税額控除 10(A)  

    (法人税額内で控除)

   納付税額     50  

 

・「外国税額控除方式」を採用しない場合は、外国法人税を経費として扱う「損金算入方式」を採用することができる。

(20190302)

 

cf  日本国内で事業活動を営む非居住の外国法人に対しては、日本国内であげた所得のみを課税対象としている。

恒久的施設(Permanent Establishment: PE)

 

(1) PEとは、支店や事務所、工場など、一般に事業を行う一定の場所等をいう。進出国にPEがあると、その活動から生じる所得に対して進出国の税務当局から課税される。

逆に言えば、PEが無ければ課税されない。

我が国にある外国法人の恒久的施設が、その本国および我が国以外の第三国で稼いだPE帰属所得に対する日本の法人税について、その外国法人も外国税額控除方式を採用できる。

 

(2) PEの種類

①支店PE : 支店、事務所、工場、作業場など

②建設PE : 建設工事等の現場

③代理人PE:日本の企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使する代理人。 仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人は、PEとはみなされない。独立の地位とは、代理人が、法的、経済的に独立しており、代理で行う行為が、自己の事業の一部である状態を指す。日本企業が代理店にコミッションを送金する場合、移転価格(後述) とみなされないレベルの算出、日本における源泉徴収と現地でに2重課税防止のための手続きが必要となる。 

 

過小資本税制

・日本にある外国企業が海外の親企業などから資金を調達するのに際し、出資(関連企業への配当は損金算入できない)を少なくし、借入れ(関連企業への支払利子は損金算入できる)を多くすれば、わが国での税負担を軽減することができる。

・過少資本税制とは、海外の関連企業から過大な貸付けを受け入れることによる企業の租税回避を防止するため、出資と貸付けの比率が一定割合(原則として、外国親会社等の資本持分の3倍)を超える部分の支払利子に損金算入を認めないこととする制度。

(出典:財務省HP https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/179.htm )

 

過大支払利子税制

親会社への支払い利子を過大に設定し、支払い利息を損金に計上して利益を少なくすることによる租税回避に対応。

 

価格移転税制

・ 企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となる。

・ 移転価格税制は、このような海外の関連企業との間の取引 (*1)を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格*2)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。

(出典:財務省HP  http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/177.htm

(*1)取引:モノの販売、知的財産権、役務、資金貸付・保証も含む。

(*2) 独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法、原価基準法

・取引について収益を計上していない場合で、贈与に該当する場合は、寄付金とされ、価格移転税制は適用されない。

税率の高い国にある子会社には、部品などを高い価格で供給して当該子会社の所得を低く抑える。低税率国または無税国にはその反対の操作をする。
それにより、企業グループ全体としての税引き所得を最大にする様操作することができる。
これを防止するため、その取引価格と,資本関係のない別個独立した企業間の取引でなされたらつけられるであろう価格(独立企業間価格) との差額を、更生所得として追徴課税で徴収する税制が、移転価格税制。
財務省HPを一部変更
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/177.htm
事前確認制度 (APA : Advance Pricing Agreement)
「その取引価格が資本関係のない別個独立した企業間の取引でなされたらつけられるであろう価格」について、税務当局と後日「見解の相違」が発生しないよう、企業が国外関連会社と取引を行うにあたって、その企業が採用する独立企業間取引価格及とその計算方法の妥当性を、税務当局から事前に合意を得ておく。
これにより、後日の課税リスクや、更正のリスクを回避することができる。
国税庁HP
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h19/apa/index.htm 

コーポレート・インバージョン対策税制

多国籍企業の法人税逃れを防止するための制度。

多国籍企業が、法人税の低い国に本社を設け、その子会社となることにより法人税を逃れることへの対応。

外国子会社合算税制 (タックス・ヘイブン対策税制)

日本の企業が税率の低い国に海外子会社を設立し、そこ経由で国際取引をすることにより、日本から直接海外取引をするよりも日本での法人税負担を不当に軽減・回避することを防ぐ税制。

海外子会社の所得を、日本の親会社の所得と合算して日本で課税する。

 

外国子会社配当益金不算入制度

外国子会社配当益金不算入制度は、親会社が外国子会社から受け取る配当を益金不算入とするもの。

対象となる外国子会社は、内国法人の持株割合が25%(租税条約により異なる割合が定められている場合は、その割合)以上で、保有期間が6月以上の外国法人

外国子会社から受け取る配当の額の95%相当額を益金不算入(配当の額の5%相当額は、その配当に係る費用として益金に算入)

出所:財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/h02.htm#a02