包括許可とは、貨物・技術の種類と仕向地から判断して、一括して輸出許可を行っても安全保障貿易管理上で問題ないと認められる場合に、個々の契約や輸出等に関して個別に経済産業省の安全保障面からの審査をうけるのではなく、包括的に輸出又は役務取引についての許可受ける制度。
リスト規制製品を製造し、一定の国へ継続的に輸出を行う企業にとっては、契約ごとの個別輸出許可を取得するよりも、「一般包括許可」を取ったほうが便利である。
根拠条文(貨物の場合)輸出貿易管理規則
第2条の2 経済産業大臣は、必要があるときは、法第四十八条第一項 の規定による経済産業大臣の許可又は令第二条第一項 の規定による経済産業大臣の承認を受ける手続について、第一条の規定にかかわらず、特別な手続を定めることができる。
根拠条文(役務の場合) 外国為替令
第17条5 第一項又は第三項に規定する取引のうち経済産業大臣が当該取引の当事者、内容その他からみて法の目的を達成するため特に支障がないと認めて指定したものについては、法第二十五条第一項 又は第四項 の規定による経済産業大臣の許可を受けないで当該取引をすることができる。
なお、輸出貿易管理令は第4条で、「(特例)第四条 法第四十八条第一項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。ただし、別表第一の一の項の中欄に掲げる貨物については、この限りでない。」と規定しており、特例が利用できる場合は輸出許可は不要であるので、包括許可は適用できない。
包括許可取扱要領
外為法第48条第1項の許可であって特定の地域を仕向地とする特定の貨物の輸出について一括して許可を行うもの及び法第25条第1項の許可であって特定国において特定の技術を提供することを目的とする取引又
は特定国の非居住者に特定の技術を提供することを目的とする取引について一括して許可を行うものについて、一般包括許可、特別一般包括許可、特定包括許可、特別返品等包括許可及び特定子会社包括許可の要件、許可に付する条件、各種手続き及び有効期限等を定めている。
一定の場合は包括許可が失効したり、事前に経済産業大臣へ届け出、事後に報告が必要な場合が出てくる。
この詳細も「包括許可取扱要領」にまとめられている。
I 一般包括 | II 特別一般包括 | III 特定包括 | Ⅳ 特別返品包括 | V 特定子会社包括 |
2~14 |
2~15 |
1~14 | 1の項 | |
グループA国 向けに限定 |
グループB/C国向けを含む | 継続的な取引関係を行っている同一の相手方に対する輸出を包括的に許可する制度 | グループA国向けに限定 | 我が国企業の子会社向け(50%超資本)に対する一定の品目の輸出について包括的に許可する制度 |
輸出令別表第3の2又は同表第4に掲げる地域を経由又は仕向地とする場合は適用できない。 | ||||
1年間に、貨物は同一の輸入者向けの輸出許可取得件数が6件以上、役務は同一の取引の相手方への技術提供に係る役務取引許可取得件数が3件以上 | ||||
輸出管理内部規定受理票 (「該非確認責任者+統括責任者」を経産大臣に届ければ省略可。) |
輸出管理内部規定受理票 |
輸出管理内部規定受理票 |
輸出管理内部規定受理票 |
輸出管理内部規定受理票 |
チェックリスト受理票 |
チェックリスト受理票
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チェックリスト受理票
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チェックリスト受理票
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チェックリスト受理票
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電子申請 | 電子申請 | 電子申請 | n/a | n/a |
実地調査ナシ |
実地調査 | 実地調査 | 実地調査 | 実地調査 |
n/a |
輸出管理内部規程に基づき内部審査を実施した上で貨物の輸出又は技術の提供を行ったことがある者 | |||
経済産業局(通商事務所を含む)または沖縄総合事務局の商品輸出担当課 | 経済産業局(通商事務所を含む)または沖縄総合事務局の商品輸出担当課 | 安全保障貿易審査課 | 安全保障貿易審査課 | 安全保障貿易審査課 |
通関手続きを行う際、包括許可の対象貨物に該当する「輸出貿易管理令」別表第1の 『項』及び『番号』並びに貨物等省令の『該当規定』をインボイスに記載する。 | ||||
輸出令別表第1の『項』又は『番号』に掲げる貨物の全てが一般包括、特一包括の対象となっているような場合(税関が、政令の『項』及び『番号』のみの記載でも一般、特一包括の対象貨物であることを容易に確認できる場合)には、例外的に省令の『該当規定』の記載を省略できる。 | 「返送に係る輸出」を行う場 合は「返送イ」「返 送ロ」「返送ハ」、及び輸出の理由についてもインボイスに記載する。 |
ポイント
一般包括と特別返品包括はグループA国のみ対象。
貨物包括マトリックス
縦軸に輸出令別表第1の項番に沿った貨物が、横軸に仕向地が「い地域」~「り地域」まで書かれていて、
それぞれが交差するところに「特別一般 /一般」など、その組み合わせで利用できる包括許可の種類が示されている。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/tutatu24fy/matrix_kamotu.pdf
役務包括マトリックス
縦軸に外為令別表の項番に沿った技術であって、貨物の設計(製造)(又は)(使用)に係るものが、横軸に仕向地が「い地域」~「り地域」まで書かれていて、それぞれが交差するところに「特別一般 /一般」など、その組み合わせで利用できる包括許可の種類が示されている。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/tutatu24fy/matrix_ekimu.pdf
仕向地マトリックス
「い地域」~「り地域」が具体的にどの国に該当するかが、縦軸に国名、横軸に「い地域」~「り地域」が書かれている。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/tutatu24fy/matrix_shimukechi.pdf
(20200219)
特別一般包括【特一】 | 核兵器等の開発等に | その他の軍事用途に | |
用いられる(利用される)場合 | 別3地域向け | 失効 | 事後報告 |
それ以外 | 失効 | 失効 | |
用いられる(利用される)恐れがある場合 | 別3地域向け | インフォームあれば失効 | N/A |
それ以外 | 失効 | ||
用いられる(利用される)疑いがある場合 | 別3地域向け | 事前に届出* | 事後報告 |
それ以外 | 事前に届出* |
1) 「核兵器等の開発等」とは、核兵器、軍用の化学製剤又は細菌製剤、これらの散布のための装置、こ
れらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機であってその射程若しくは航続距離が300キロメートル以上のものの開発、製造、使用又は貯蔵を指す。
「その他の軍事用途」とは、輸出令別表第1の1の項に該当する貨物(次に掲げるものを除く。)の開発、製造又は使用を指す(核兵器等の開発等に該当するものを除く。)。
① 空気銃、散弾銃、ライフル銃、火縄式銃砲のいずれかであって、スポーツ用又は狩猟用のもの
② 救命銃、もり銃、リベット銃その他これらに類する産業用銃
③ ①に用いる銃砲弾
④ ①②の附属品(暗視機能を有するものを除く。)
⑤ 上記のものの部分品
⑥ 産業用の発破器
⑦ 産業用の火薬、爆薬、これらの火工品
2)「利用される場合」とは、提供される技術が核兵器等の開発等やその他の軍事用途に利用されることとなる旨、その取引に関する契約書又は取引を行おうとする者が入手した文書、図画若しくは電磁的記録において記載され若しくは記録されている場合や、取引の相手方若しくは当該技術を利用する者若しくはこれらの代理人から連絡を受けた場合を指す。
3)「利用されるおそれがある場合」とは、上記2)以外の場合であって、提供される技術が貿易関係貿易外取引等に関する省令第9条第2項第七号イの規定により経済産業大臣が告示で定める提供しようとする技術が核兵器等の開発等のために利用されるおそれがある場合(平成13年経済産業省告示第759号)の規定に該当する場合又は核兵器等の開発等のために利用されるおそれがあるものとして経済産業大臣から通知を受けた場合を指す。
4) 「利用される疑いがある場合」とは、上記2)、3)以外の場合であって、提供される技術が核兵器
等の開発等やその他の軍事用途に利用される疑いのある場合を指す。
5) 軍若しくは軍関係機関又はこれらに類する機関とは、軍隊又は国防、治安の維持若しくは安全保障等
を目的とする機関(警察及び情報機関を含む。)及びこれらの機関に属する機関をいう。
ただし、これらの機関を利用する者とする場合であっても、懸念がないことが明らかな場合として次に掲げるものに該当する場合は届出を行うことを要しない。
1.病院等において、医療行為に用いられることが明らかな場合
2.会計事務等の事務処理のために用いられることが明らかな場合
3.もっぱら事故・災害防止又は人命救助のために用いられることが明らかな場合
税関における包括許可の確認方法について
(1) 一般、特一、特定、特別返品特定、特定子会社包括許可を受けている輸出者は、通関手続きを行う際、包括許可の対象貨物に該当する「輸出貿易 管理令」別表第1の 『項』及び『番号』並びに「輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表の規 定に基づき貨物又は技術を定める省令」(貨物等省令)の『該当規定』をインボイスに記載する。
(2) ただし、輸出令別表第1の『項』又は『番号』に掲げる貨物の全てが一般包括、特一包括の対象となっているような場合(税関が、政令の『項』及び『番号』のみの記載でも一般、特一包括の対象貨物であることを容易に確認できる場合)には、例外的に省令の『該当規定』の記載を省略することができる。
(記載例1)5の項(2) 貨物等省令第4条第一号ロ
(記載例2)5-2 4-1-ロ
(3) 該当規定の記載のみでは一般包括許可又は特別一般包括許可の対象か否か判別できない場合には、当該貨物の概要についても一般包括許可又は特別一般包括許可の対象であることが判別できるように、インボイスに記載する。
(記載例3)3の項(1)貨物等省令第2条第1項第一号ニ ジメチルアミン 2kg
(4) 「返送に係る輸出」を行う場 合は「返送イ」「返 送ロ」「返送ハ」、及び輸出の理由についてもインボイスに記載する。
輸出令別表第1の2の項から15の項まで の中欄に掲げる貨物であるか16の項の中欄に掲げる貨物であるか必ずしも明 らかでないものの輸出を行う場合は、当該貨物の概要及び当該貨物が 該非不明である旨について必ずインボイスに記載する。
(記載例4)15の項(2)貨物等省令第14条第二号イ、返送イ(本邦から 輸出された貨物であって、検査のために輸入された貨物の輸出)
(記載例5)重力計1基(該非不明)、返送ロ(誤送品の返送のために行う輸 出)
(20210207)
包括許可取扱要領で規定されている書類の提出窓口
・輸出管理内部規程:安全保障貿易検査官室
・代表者名変更届:許可証を発行した申請窓口
・住居表示変更届:許可証を発行した申請窓口
・輸出又は取引の実績の報告:安全保障貿易審査課
・包括許可の条件に従い、核兵器等の開発等若しくはその他の軍事用途に関して必要とあんる届出、報告又は失効した場合の提出:安全保障貿易審査課
・「輸出管理内部規程の届け出等について」に定める輸出者等概要・自己管理チェックリストの提出窓口:安全保障貿易検査官室
その他
少額特例や修理特例が利用できる場合は輸出許可は不要となるので、包括許可の申請はできない。