各種の役務取引
経済産業省の安全保障貿易管理のQ&Aページでは、「技術とは何を指しているのでしょうか。という問いに対して、下記の様に説明している:
「貨物の設計、製造又は使用に必要な特定の情報をいいます。この情報は、技術データ又は技術支援の形態で提供されます。技術データには、技術内容が記載された文書や設計図,仕様書,マニュアル,指示書等の他、プログラムも含まれます。技術支援には、技術指導や技能訓練,コンサルティングサービスその他の形態があります。」https://www.meti.go.jp/policy/anpo/qanda25.html
典型的には産業スパイが軍事技術の設計図を持ち出すなどが考えられるが、我が国の安全保障貿易管理法令では様々なパターンが規制されている。
特定記録媒体等
外為法25条項1号
3 経済産業大臣は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める行為をしようとする者に対し、政令で定めるところにより、当該行為について、許可を受ける義務を課することができる。
一 第一項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるとき 同項の取引に関する次に掲げる行為
イ 特定国を仕向地とする特定技術を内容とする情報が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体(以下「特定記録媒体等」という。)の輸出
ロ 特定国において受信されることを目的として行う電気通信による特定技術を内容とする情報の送信(本邦内にある電気通信設備)からの送信に限る。
外国為替令17条
2 法第二十五条第三項第一号に定める行為をしようとする者(当該行為に係る特定技術を提供することを目的とする取引について同条第一項の許可を受けている者を除く。)は、経済産業省令で定める手続に従い、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
ただし、経済産業大臣が当該行為の主体、内容その他からみて法の目的を達成するため特に支障がないと認めて指定した行為については、この限りでない。(注:貿易外省令9条)
役務通達
1- (2) 許可を受けなければならない特定記録媒体等輸出等の範囲
外為令第17条第2項で規定される許可を受けなければならない外為法第25条第3項第一号で定める行為とは、外為法第25条第1項の規定に基づき許可を受けなければならない取引に関して行われる
①特定技術を内容とする特定記録媒体等の特定国への輸出及び
②特定国において受信されることを目的として行う電気通信による特定技術を内容とする本邦からの情報の送信をいい、
外為法第25条第1項の取引を現に行っている者又は特定国において取引を行おうとする者が、当該取引により提供される技術について行う①又は②の行為(当該取引の相手方が明確になっていない場合を含む。)、及び
外為法第25条第1項の取引により技術の提供を受けた取引の相手方が当該技術について行う①又は②の行為がこれに該当する
(例えば、電気通信ネットワーク上のファイルへの記録等により不特定多数の者が制限なく無償で入手可能とするための行為はこれに含まれない。)。
ただし、外為法第25条第1項の取引について許可を受けている申請者がその許可された取引により提供される技術について①又は②の行為を行う場合は当該行為について許可を受けることを要しない。
また、許可を受けた外為法第25条第1項の取引により技術の提供を受けた取引の相手方が当該取引に関して行う①又は②の行為、その他の貿易外省令第9条第1項において規定する経済産業大臣が当該行為の主体、内容その他からみて法の目的を達成するために特に支障がないと認めて指定した行為についても許可を受けることを要しない。
クラウドコンピューターサービス
(役務通達)
別紙1-2 いわゆるクラウドコンピューティングサービスの解釈
(1) 情報を保管し利用するためのサーバーを提供するサービス(ストレージサービス)においては、当該サービス利用者が意図するとしないとにかかわらず、国外に設置されたサーバーに情報が保管される可能性がある。
他方で、ストレージサービスを利用するための契約は、サービス利用者が自らが使用するためにサービス提供者のサーバーに情報を保管することのみを目的とする契約である限りにおいて、サービス利用者からサービス提供者等に情報を提供することを目的とする取引にあたらないため、外国に設置されたサーバーに特定技術が保管される場合であっても、原則として外為法第25条第1項に規定する役務取引に該当せず、同条に基づく許可を要しない。したがって、外為法第25条第3項の対象にも該当しない。
ただし、実質的にはサービス利用者からサービス提供者等に特定技術を提供することを目的とする取引である
と認められる場合は、外為法第25条第1項に定める役務取引に該当する。例えば、保管した特定技術をサービス提供者等が閲覧、取得又は利用できることを知りながら契約を締結する場合には、当該契約は特定技術の情報を提供することを目的とする取引とみなす。
また、契約を開始した後に、保管した特定技術をサービス提供者等が閲覧、取得又は利用していることが判明したにもかかわらず、契約関係を継続する場合には、当該事実が判明してから、保管した特定技術の削除に必要な時間を経過した時点をもって、当該特定技術の提供を目的とする取引が開始するものとみなす。
なお、サービス利用者が第三者に特定技術を提供するためにストレージサービスを利用する場合は、当然なが
ら、当該サービス利用者から当該第三者に対する特定技術の提供を目的とする取引となる。
(2) サーバー上に存在するプログラム(アプリケーションソフトウェア等)を、インターネットを介して、他者がダウンロードすることなく利用できる状態にするサービス(SaaS等)を提供することは、プログラムをサービス利用者にとって利用できる状態に置くことを目的とする取引であり、提供を目的とする取引にあたるため、当該プログラムが特定技術であれば、外為法第25条第1項に定める役務取引に該当する。
ただし、貿易外省令第9条第2項第十四号イの要件を満たすプログラム(メモ:市販のプログラム、無償のプログラム)については、役務取引許可は不要である。
なお、当該プログラムの提供の時点は、サービス提供者がプログラムをサービス利用者にとって利用できる状
態に置いた時点であり、役務取引許可申請が必要な場合にあっては、それ以前に許可を得る必要がある。
経産省&A
Q55:質問 2013/6/26
社内技術データをストレージサービスに預けることを検討していますが、外為法上の規制との関係はどう考えればよいですか。
A55:回答
役務通達別紙1-2(1)にあるとおり、ストレージサービス契約は、情報を保管することのみを目的としている限りにおいて、たとえストレージ用のサーバーが外国に設置されている場合であっても、外為法第25条第1項に定める役務取引に該当しないと考えられます。しかし、実質的には技術提供を目的とした取引であると認められる場合には、役務取引にあたりますので、保管する情報が外為法上規制対象となっている技術である場合には許可申請が必要となります。
例えば、保管した技術情報をサービス提供者等が閲覧、取得又は利用することを知っていた場合や、契約後に知ったにもかかわらずそのままにしている場合については、役務通達別紙1-2(1)のとおり、実質的には技術提供を目的とした取引とみなされることになります。また、契約当時に判明していた情報から、保管した情報がサービス提供者等によって閲覧、取得又は利用されることが明白であった場合は、サービス提供者等への提供目的で技術情報を預けた疑いが生じえます。
したがって、ストレージサービスの利用に当たっては、保管する技術情報の機微性や、当該サービスの契約文面、セキュリティレベル、サーバーの物理的設置国等に関する公開情報をふまえて検討をしていただくことが重要です。特に、リスト規制に該当するような機微な技術情報を保管する場合には、上記各項目に関する確認は不可欠であり、例えば、当該確認を怠ったことにより、技術情報がサービス提供者等によって持ち出された場合には、実質的には提供を目的とした取引であった可能性が追及されうるほか、各企業への信頼に基づいて行われる輸出管理上の行政判断に影響を及ぼす場合がありますので、注意してください。