提供する技術の該否判定

外為令別表中欄に掲げる技術

原則、規制対象のスペックを有する貨物あっての技術である。 

下記は外為令別表の一部であるが、「技術」の欄を見ると「輸出貿易管理令別表第1の**に掲げる貨物の設計、製造、または使用に係る技術」と書かれている。つまり、貨物の該否判定が先にあって、リスト規制に該当するスペックの貨物を設計したり、製造したり、使用したりするための技術が、技術の面での該否判定の対象となる。

技術のスペックは、貨物と同様「貨物等省令」に記載されている。貨物等省令分は、前半で貨物のスペックを定めた、後半で貨物に関する条文をレファーする形で、スペックに該当する貨物を設計、製造、使用する技術のスペックを定めている。

従って、まづは貨物の該否判定を先に行い、非該当の貨物についての技術であれば、原則として規制対象とはならない。

例えばマイクロプロセッサの製造技術があるとする。しかし、ありとあらゆるマイクロプロセッサの製造技術が規制されるわけではない。貨物として外為法の規制対象となる一定のスペックを持ったマイクロプロセッサに関する技術が規制対象となる。

マイクロプロセッサは輸出貿易管理令別表第1_七の項に掲げられている。

 

輸出貿易管理令別表第1_七の項 (抜粋)

 

輸出貿易管理令別表第一では細かな品名を挙げているが、そのスペックは経済産業省令である貨物等省令に丸投げされている。そして、貨物等省令に定める、輸出貿易管理令別表第1_ 7の項のスペックの一部は下記通りである。

 

(貨物等省令)第六条 輸出令別表第一の七の項の経済産業省令で定める仕様のものは、次のいずれかに該当するものとする。

一 集積回路(モノリシック集積回路、ハイブリッド集積回路、マルチチップ集積回路、膜形集積回路(シリコンオンサファイア集積回路を含む。)、光集積回路、三次元集積回路及びモノリシックマイクロ波集積回路を含む。)であって、次のいずれかに該当するもの

イ 次のいずれかの放射線照射に耐えられるように設計したもの

(一) 全吸収線量がシリコン換算で五、〇〇〇グレイ以上のもの

(二) 吸収線量がシリコン換算で一秒間に五、〇〇〇、〇〇〇グレイ以上のもの

(三) 一メガ電子ボルト相当の中性子束(積算値)が一平方センチメートル当たり五〇兆個以上となるもの(MIS形のものは除く。)

ロ マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、化合物半導体を用いた記憶素子用のもの、アナログデジタル変換用のもの、アナログデジタル変換機能を有しデジタル化されたデータを記録し、若しくは処理することができるもの、デジタルアナログ変換用のもの、信号処理用の電気光学的集積回路若しくは光集積回路、フィールドプログラマブルロジックデバイス、カスタム集積回路(ハからチまで若しくはルからワまでのいずれかに該当する貨物であるかどうかの判断をすることができるもの又は輸出令別表第一の五から一五までの項の中欄のいずれかに該当する貨物に使用するように設計したものであるかどうかの判断をすることができるものを除く。以下この条において同じ。)、FFTプロセッサ、スタティック式のラム又は不揮発性メモリーであって、次のいずれかに該当するもの(民生用の自動車又は鉄道車両用に設計した集積回路を除く。)

(一) 一二五度を超える温度で使用することができるように設計したもの

(二) 零下五五度未満の温度で使用することができるように設計したもの

(三) 零下五五度以上一二五度以下のすべての温度範囲で使用することができるように設計したもの

ハ マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はマイクロコントローラのうち、化合物半導体を用いたものであって、最大クロック周波数が四〇メガヘルツを超えるもの

 

一方、技術については外国為替令別表に列挙されており、マイクロプロセッサが掲げられている輸出貿易管理令別表第1_七の項に対応するのは、外国為替令別表_七の項である。

 

外国為替令別表_七の項 (抜粋)

  技術 外国

(一) 輸出貿易管理令別表第一の七の項の中欄に掲げる貨物の設計又は製造に係る技術であつて、経済産業省令で定めるもの (メモ:従い、使用説明書など「使用」に関する技術は、貨物としてのスペックを満たす集積回路の使用説明書は、規制対象とはならない。)

(二) 輸出貿易管理令別表第一の七の項(十六)に掲げる貨物の使用に係る技術であつて、経済産業省令で定めるもの

(三) 集積回路の設計又は製造に係る技術であつて(メモ:貨物に紐つきでない)、経済産業省令で定めるもの((一)及び四の項の中欄に掲げるものを除く。)

(四) 超電導材料を用いた装置の設計又は製造に係る技術であつて(メモ:貨物に紐つきでない)、経済産業省令で定めるもの((一)に掲げるものを除く。)

(五) 電子管又は半導体素子の設計又は製造に係る技術であつて(メモ:貨物に紐つきでない)、経済産業省令で定めるもの((一)に掲げるものを除く。)

<以下略>

全地域

 上記のうち、(一)(二)は、「輸出貿易管理令別表第1の**に掲げる貨物の設計、製造、または使用に係る技術」と書かれている。つまり、貨物の該否判定が先にあって、リスト規制に該当するスペックを持つ貨物を設計したり、製造したり、使用したりする技術か否かが、技術の面での該否判定の対象となる。従って、まづは貨物の該否判定を先に行い、非該当の貨物についての技術であれば原則として規制対象とはならない。

 

 一方、(三)にいう、集積回路の設計又は製造に係る技術 (四)にいう、超電導材料を用いた装置の設計又は製造に係る技術、(五)にいう、電子管又は半導体素子の設計又は製造に係る技術については、「輸出貿易管理令別表~に掲げる貨物の」という限定がついていない。これらは特定のスペックに合う貨物か否かにかかわらず、貨物等省令に定めた技術のスペックに合えば規制対象の技術となる。

(三)(四)(五)は、輸出貿易管理令の貨物の項番を引用しない形で規定されている。これは技術のみが規制される「はみだし技術」と言われる。冒頭で「まづは貨物の該否判定を先に行い、非該当の貨物についての技術であれば原則として規制対象とはならない。」と書いたが、その例外がはみだし技術である。

 

外国為替令別表では技術の概要は挙げられているが、そのスペックは貨物のスペックと同様、経済産業省令である貨物等省令に丸投げされている。

 

貨物等省令の全体の構成は、前の方に貨物のスペックが書いてあり、後の方に、前の方の貨物を受ける形で技術のスペックが書かれている後世になっている。

例えば、

 

第六条 輸出令別表第一の七の項の経済産業省令で定める仕様のものは、次のいずれかに該当するものとする。(メモ:こちらが貨物のスペック)

一 集積回路(モノリシック集積回路、ハイブリッド集積回路、マルチチップ集積回路、膜形集積回路(シリコンオンサファイア集積回路を含む。)、光集積回路、三次元集積回路及びモノリシックマイクロ波集積回路を含む。)であって、次のいずれかに該当するもの

イ 次のいずれかの放射線照射に耐えられるように設計したもの

(一) 全吸収線量がシリコン換算で五、〇〇〇グレイ以上のもの

(二) 吸収線量がシリコン換算で一秒間に五、〇〇〇、〇〇〇グレイ以上のもの

(三) 一メガ電子ボルト相当の中性子束(積算値)が一平方センチメートル当たり五〇兆個以上となるもの(MIS形のものは除く。)

ロ マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、化合物半導体を用いた記憶素子用のもの、アナログデジタル変換用のもの、アナログデジタル変換機能を有しデジタル化されたデータを記録し、若しくは処理することができるもの、デジタルアナログ変換用のもの、信号処理用の電気光学的集積回路若しくは光集積回路、フィールドプログラマブルロジックデバイス、カスタム集積回路(ハからチまで若しくはルからワまでのいずれかに該当する貨物であるかどうかの判断をすることができるもの又は輸出令別表第一の五から一五までの項の中欄のいずれかに該当する貨物に使用するように設計したものであるかどうかの判断をすることができるものを除く。以下この条において同じ。)、FFTプロセッサ、スタティック式のラム又は不揮発性メモリーであって、次のいずれかに該当するもの(民生用の自動車又は鉄道車両用に設計した集積回路を除く。)

(一) 一二五度を超える温度で使用することができるように設計したもの

(二) 零下五五度未満の温度で使用することができるように設計したもの

(三) 零下五五度以上一二五度以下のすべての温度範囲で使用することができるように設計したもの

ハ マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はマイクロコントローラのうち、化合物半導体を用いたものであって、最大クロック周波数が四〇メガヘルツを超えるもの

<以下略>

     ↓ 

第十九条 外為令別表の七の項(一)の経済産業省令で定める技術は、次のいずれかに該当するものとする。

(メモ:こちらが技術のスペック)

 第六条第二号ハ(一)5若しくは6若しくは(二)3若しくはニ(一)5若しくは6若しくは(二)3若しくは4又は第十六号ロに該当するものの設計又は製造に必要な技術(プログラムを除く。)

二 第六条に該当するもの(同条第二号ハ(一)5若しくは6若しくは(二)3若しくはニ(一)5若しくは6若しくは(二)3若しくは4又は第十六号ロに該当するものを除く。)の設計又は製造に必要な技術(プログラムを除く。)であって、次のいずれにも該当しないもの

イ 同条第十六号の二に該当するものの製造に必要な技術

ロ 同条第一号ハからルまでのいずれかに該当する集積回路のうち、次の(一)及び(二)に該当するものの設計又は製造に必要な技術

(一) 最小線幅が〇・一三〇マイクロメートル以上のもの

(二) 多層構造を有するもの(金属層が三層以下のものに限る。)

ハ プロセスデザインキット(同条第一号から第八号の四までのいずれかに該当する貨物に係る機能又は技術を実装するライブラリが含まれているものを除く。)

三 第六条第十六号ロに該当するものを設計し、又は製造するために設計したプログラム

四 第六条第十六号の二に該当するものを設計するために設計したプログラム

五 第六条に該当するもの(前二号又は同条第一号若しくは第十八号から第二十四号までのいずれかに該当するものを除く。)を設計し、又は製造するために設計したプログラム

2 外為令別表の七の項(二)の経済産業省令で定める技術は、第六条第十七号イ、ロ、ホ、ヘ又はヌのいずれかに該当するものを使用するために設計したプログラムとする。

3 外為令別表の七の項(三)の経済産業省令で定める技術は、次のいずれかに該当するものとする。

一 極端紫外を用いて集積回路を製造するための装置用のマスク又はレチクルのパターンを設計するために特に設計したコンピューテーショナル・リソグラフィ・プログラム

二 絶縁体が二酸化けい素からなる集積回路の基板であって、シリコンオンインシュレータ構造を有するものの設計又は製造に係る技術(プログラムを除く。)

三 マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はマイクロコントローラのコアであって、論理演算ユニットのアクセス幅のビット数が三二以上のもののうち、次のいずれかに該当するものの設計又は製造に必要な技術(プログラムを除く。)

イ ベクトル演算器であって、浮動小数点ベクトル演算処理を同時に二を超えて実現できるように設計したもの

ロ 六四ビット以上の浮動小数点演算処理を一サイクル当たり四を超えて実現できるように設計したもの

ハ 一六ビットの固定小数点積和演算処理を一サイクル当たり八を超えて実現できるように設計したもの

四 電磁パルス又は静電放電による中断から一ミリ秒以内に動作の連続性を失うことなくマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサを正常状態に回復するように特に設計したプログラム

五 直径三〇〇ミリメートルのシリコンウエハーの外周の除外領域を二ミリメートル以下としたウエハーの表面に対するスライス、研削及び研磨の技術のうち、長さ二六ミリメートル、幅八ミリメートルの長方形に分割されたいずれの領域における平坦度が二〇ナノメートル以下を達成するために必要な技術(プログラムを除く。)

4 外為令別表の七の項(四)の経済産業省令で定める技術は、超電導材料を用いた電子素子の設計又は製造に係る技術(プログラムを除く。)とする。

5 外為令別表の七の項(五)の経済産業省令で定める技術は、次のいずれかに該当するものとする。

一 削除

二 真空マイクロエレクトロニクス装置の設計又は製造に係る技術(プログラムを除く。)

三 ヘテロ接合の半導体素子(動作周波数が三一・八ギガヘルツ未満の高電子移動度トランジスタ又はヘテロ接合バイポーラトランジスタを除く。)の設計又は製造に係る技術(プログラムを除く。)

四 電子機器の部分品として用いる基板であって、ダイヤモンドからなる薄膜又は炭化けい素を用いたものの設計又は製造に係る技術(プログラムを除く。)

五 動作周波数が三一・八ギガヘルツ以上の真空電子デバイス(クライストロン、進行波管及びこれらから派生したものを含む。)の設計又は製造に係る技術(プログラムを除く。)

そこで例えば、貨物等省令第6条1号ハより、最大クロック周波数が四〇メガヘルツを超えるマイクロプロセッサで化合物半導体を用いたものは、外為法規制されるマイクロプロセッサとなる。

そして、貨物等省令第19条では、最大クロック周波数が四〇メガヘルツを超えるマイクロプロセッサで、最小線幅が〇・一三〇マイクロメートル未満のもので、金属層が三層以下の多層構造をしないものの設計又は製造に必要な技術が、外為法規制されるマイクロプロセッサ関連の技術となる。

 

外国為替令と貨物等省令の関係をわかりやすくまとめた「外為令及び貨物等省令のマトリックス」が経産省のサイトで公開されている。https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html

該否判定

貨物の該否判定を行ったうえで、その貨物の設計、製造、使用に係る技術の該否判定を判定する。

  ↓                 ↓

リスト規制に該当          リスト規制に該当しない (非該当)

  ↓                 ↓

 輸出許可が必要                           キャッチオール規制の確認

                       

今回の取引で許可不要の規定(役務)、包括許可を使うことはできるか?

  ↓                          ↓

   Yes                  No

  ↓                  ↓

    許可申請不要                              許可申請が必要