納税申告方式
輸入者が自分で関税額を計算して申告する。
(1) 過少に申告してしまった:
① 輸入者が修正申告:修正申告により関税額確定。 不足分+延滞税。
② 税関長による更正: 不足分+延滞税+過少申告加算税。
(2) 過大に申告してしまった:更正の請求 (この段階では関税額は確定しない。)→税関長が認めて「更正」して関税額が決定。
(3) 無申告:税関長の決定処分による関税+延滞税+無申告加算税
賦課課税方式
課税価格20万円以下の郵便物、携帯品など
過少申告加算税、無申告加算税、重加算税
輸入者は申告不要、税関長が関税額の決定を行う。
関税額は税関長の賦課決定により確定。
法定納期限
輸入許可の日
延滞税の起算日:法廷納期限の翌日
納期限
修正申告の日
法定納期限等
更正、決定、賦課決定のできる期間の起算日
更正
納税申告された税額を税関長が正しい税額に確定する。
増額更正
減額更正
関税の確定
(1) 輸入申告価格
①申告納税方式→納める税額が納税者の申告によって確定する納税方式。
(原則)申告の時の輸入港到着価格(CIF)を円貨で表示したもの。
CIF円建て →そのままの価格を円表示
CIF外貨建て→輸入申告日の属する週の前々週の週間平均値を乗じて円表示
(例) 申告年月日 2019年11月1日
実勢外国為替相場の平均値
2019/10/6 -10/12 108.50
2019/10/13-10/19
109.00 輸入申告日の属する週の前々週の週間平均値
2019/10/20-10/26 109.50
2019/10/27-11/2 110.00 輸入申告日の属する週
FOB→インボイス金額FOBに海上保険料と海上運賃を加算。エビデンス添付。
C&F→インボイス金額に保険料を加算。エビデンス添付。
・WTO加盟国の原則的な課税価格の算出方法は関税評価協定(1944年の関税および貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定)に従う。→輸入港到着価格又は輸入港までの運賃等を含まない輸出国サイドの価格のいずれを評価のベースとするかは締約国の法令に委ねている。→我が国は輸入港到着価格。
→現実支払価格(Invoice価格) に輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃,保険料その他の運送に関連する費用が含まれていない場合には,この費用を加える。
(例外)FOBやC&Fの場合でも海上保険を付保しなかった場合には、貨物の価格と運賃の合計額が課税価格。
(注) 輸出申告:FOB
②申告納税方式は、納税者(輸入者)が適正な申告をすることを前提として成り立つ制度
→事後調査:その適正な申告が行なわれているか否かを調べ、適正な申告を確保するために行なわれる、輸入後の税関による調査
・最寄の税関より税関事後調査を実施するとの通知を受けた場合、税関の調査対象となる輸入申告は当該税関管轄内の官署に限らず、日本全国の税関官署への一定期間内の輸入納税申告が対象となり、併せて内国消費税についても調査が行われる。
(2) 航空運賃特例
航空便で送られてきた「理由のある特定の貨物」→CIF価格のIとFについて、航空運賃によるのではなく、海上輸送による運賃・保険料で申告可。
・契約上は海上運送だったのに、
・貨物の製作の遅延その他輸入者に責めのない理由により、到着遅延を回避する目的で
・輸入者以外の者が変更に伴う費用を負担することによりAIRで送られてきた場合。
(3) 携帯輸入品、別送品、輸入郵便物など法令により指定された貨物:税関長の処分により確定する賦課課税方式
【1】税率
(1) 一般税率
① 国定税率 ----基本税率、暫定税率、特恵税率
② 協定税率 (WTO)
③ FTA / EPAの税率
(2) 簡易税率
① 少額貨物税率(課税価格20万円以下)
② 携帯品・別送品の税率
【2】 国定税率(国内法で定められた税率)
(1) 基本税率 (一番ベーシックな税率)
(2) 暫定税率(時限立法として特定の輸入貨物に一定期間適用)
(3) 特恵税率 Preferential Rates
・LDC Less Developed Countriesを原産地とする物品
・一般特恵制度原産地証明書様式A,略してGSP (Generalized System of Preference Form A)が必要。
特恵関税の適用を受けるためには、総額20万円以下の物品および税関長が認めた場合を除き、FORM-Aを提出しなければならない。
・有効期限:発給の日から1年。
・特恵関税適用の条件:日本に直接運送の事。輸送の都合で第三国で積み替えの場合は原産地からの通しB/Lが必要。
・原産地認定基準
(i) 完全生産品としての基準
(ii)実質加工基準:実質的な変更を加えた国。原則HS番号の4桁の変更だが、実質を重視。
・特恵関税の付与方法
エスケープクローズ方式: 特恵関税を利用した輸入が増加して特定の国内産業に損害を与える等の理由により、政令で特恵関税の適用停止をする方式
(20181115)
【3】協定税率
WTO加盟国に適用される譲許税率
cf 最恵国待遇
ある国に与えた最も有利な待遇は、WTOの他のすべての加盟国に対して与えなければならないという原則。
cf 内国民待遇
輸入品に適用される国内販売における規制等の待遇は、関税を除き、同種の国内産品に対するものと差別してはならないという、WTOの基本原則。
【4】適用される税率
特恵関税
↓
特恵関税の適用が無ければ、国定税率が適用される。
国定税率のうち、原則として基本税率が適用されるが、暫定税率があれば暫定税率が適用される。
↓
国定税率と協定税率を比べて、税率の低い方を適用する。
国定税率と協定税率が同率の場合は、適用する税率は国定税率である、として扱う。
(20181115)
【5】その他の関税
(1) 皮革製品等特定原材料製品の再輸入減税(関税暫定措置法第8条)
原材料を日本から送り、海外で加工・組み立てして再度輸入する際の税率。
(2) 不当廉売関税
輸出国内の販売価格(正常価格)より低い価格(ダンピング価格)で輸入製品を販売すると、輸入国内でこの貨物と同種の貨物を生産する国内産業に損害等が生じる場合がある。
これに該当したと認定されると、国内産業を保護するため、通常税率の関税のほか、この輸入製品に対して、正常価格とダンピング価格の差額(ダンピング・マージン)の範囲内で割増関税を課す制度。
WTOでも、一定の規律の下に認められている。
(3) セーフガード(緊急関税)
(4) 対抗関税
(5) 関税割当制度 TQ
一定の数量以内の輸入品に限り、無税又は低税率(1次税率)の関税を適用して、需要者に安価な輸入品の供給を確保する一方、この一定数量を超える輸入分については、比較的高税率(2次税率)の関税を適用することによって、国内生産者の保護を図る制度。 →高税率を払う限り輸入数量は制限されない。
【6】郵便物
1. 外国から送られてきた郵便物のうち課税価格が20万円以下のものについては、
原則として「輸入(納税)申告」は不要。
↓
信書を除きすべてのものが税関検査の対象となる。
↓
税関検査は、税関の外郵出張所等が置かれている日本郵便株式会社郵便局で行われる。
↓
・検査の結果、郵便物に税金がかからない場合:
日本郵便株式会社から名宛人に直接郵便物が配達される。
・検査の結果、関税など税金の合計額が1万円以下の場合、
あるいは1万円を超え30万円以下で名宛人が配達を希望する場合:
税関から日本郵便株式会社を経由して「国際郵便物課税通知書(様式C-5060)」及び
「納付書(払込金受領証を兼ねます。以下同じ。)」とともに、郵便物が直接配達されるので、
税金の納付を日本郵便株式会社に委託する旨を申し出て、税金相当額及び日本郵便株式会社の取扱手数料
を支払えば、その場で郵便物を受け取ることができる。
・その他の場合は、「国際郵便物課税通知書」は送付されるが、郵便物及び納付書は配達されない。
この場合、課税通知書の下欄の配達郵便局等日付印欄に押印されている郵便局へ行き、納付書の交付を受
け、税金を銀行の窓口又は郵便局の貯金窓口で納付すれば、郵便物を受け取ることができる。
なお、別途、日本郵便株式会社の取扱手数料を支払う必要があります。
・「外国から到着した郵便物の税関手続のお知らせ(税関様式C-5081)」という「はがき」が送られてくる
場合もある。
この場合には「はがき」で求められた書類を、その「はがき」に記載された税関外郵出張所等へ郵送または
持参するか、電話で連絡する必要がある。税関ではそれらの書類と品物を照らし合わせて価格などを確認す
るが、問題がなければ先に説明した方法で郵便物を受け取ることができる。
2. 外国から送られてきた郵便物のうち、課税価格が20万円を超えるものについては、
原則として、国内に引き取る際には、郵便物が保管されている保税地域(日本郵便株式会社郵便局)を管轄
する税関(外郵出張所等)へ輸入(納税)申告を行い、税関の検査が必要とされる郵便物については必要
な検査を受けた後、関税、内国消費税及び地方消費税を納付する必要がある場合には、これらを納付して、
輸入の許可を受けなければならない。
外国から課税価格が20万円を超える郵便物が到着すると名宛人に日本郵便株式会社から通関手続の案内文
書が送られる。その案内文書が送られてきたら、「仕入書」など輸入(納税)申告に必要な書類を揃えて、
日本郵便株式会社や他の通関業者(以下「通関業者等」といいます。)に輸入手続を依頼するか、
自分で税関への輸入(納税)申告を行う。
関税等の税金の納付が必要な場合は、税関による輸入(納税)申告の審査及び検査が終了した後に、
通関業者等に輸入手続きを依頼した場合はその通関業者等から、自分で税関への輸入(納税)申告を行った
場合は税関から、納付すべき税金の額が通知されまるので、税金を納付する。
税金が納付されたことを税関が確認すると、輸入が許可されて、郵便物が名宛人に配達される。
(注)課税価格が20万円を超える場合でも、ギフトなどの寄贈物品や差出人から一方的に送られてきた等の理由により価格等が判らない場合は、課税価格が20万円以下の場合と同様の通関手続(上記1を参照して下さい。)を行うことになる。
出典 国際郵便物の通関手続の概要(カスタムスアンサー)6101 を加工
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kokusaiyubin/6101_jr.htm
(2020年3月)
関税額の計算の基本
(与件) 輸入金額 8,500,000 関税率3.5%
関税額 8,500,000 x 3.5%=297,500
消費税額 8,500,000 + 297,500 =8,797,500 →千円未満切り捨て 8,797,000 x 7.8% = 686,166
納付消費税 686,166→100円未満切捨て 686,100
地方消費税額 686,166 →100円未満切捨て 686,100 x 22/78 =193,515
納付地方消費税 193,515 →100円未満切捨て 193,500
10% 消費税=686,100 + 193,500 = 879,600
加算税制度
(1)過少申告加算税
①納税申告が過小な場合は修正申告を行う。原則として、増加した税額の10%に相当する過少申告加算税が課せられる。
②過少申告であったことが正当な理由によるものであると認められる部分がある場合には、この部分に対して過少申告加算税は課されない。
③修正申告が税関の調査による更正を予知してされたものでない自主的な修正申告である場合には、過少申告加算税は課されない。
(2) 無申告加算税
①納税申告が必要な貨物であって、当該納税申告が行われずに輸入された貨物について、税関長の決定があった場合には、当該決定等により増加した税額の15%に相当する無申告加算税が課される。
②無申告であったことが正当な理由によるものであったと認められる場合、無申告加算税は課されない。
(3) 輸入品に係る内国消費税及び地方消費税についても加算税が課せられる。
関税定率法
第四条 輸入貨物の課税標準となる価格(課税価格)は、次項本文の規定の適用がある場合を除き、当該輸入貨物に係る輸入取引(買手が本邦に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有しない者であるものを除く。以下同じ。)がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格(輸出国において輸出の際に軽減又は払戻しを受けるべき関税その他の公課を除くものとする。)に、その含まれていない限度において次に掲げる運賃等の額を加えた価格(取引価格)とする。
加算項目
一 当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用(次条及び第四条の三第二項において「輸入港までの運賃等」という。)
・現地工場から船積み地までの運賃
・海上運賃
・海上保険 (付保していないなら加算不要。)
・ 老齢船の割増保険料は加算
・ 輸出者が手配したミニマムな保険では不安なので、輸入者追加で付保した保険料は加算。
・運送関連費用は加算(ex貨物を運ぶために船内改造、船待ちの蔵置費用)
二 当該輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料又は費用のうち次に掲げるもの
・「売手及び買手のため」に、又は「売手のため」に、輸入取引に関して業務を行う者に対し
買手が支払う手数料(加算) (=取引成立交渉を仲立ちする仲介手数料は加算。)
・輸入貨物の原材料の調達に係る手数料は加算
・cf 輸入貨物そのものの買付代理人に買手が支払う手数料(非加算)(=買付け手数料は非加算。)
ロ 当該輸入貨物の容器(当該輸入貨物の通常の容器と同一の種類及び価値を有するものに限る。)
の費用
ハ 当該輸入貨物の包装に要する費用
・貨物の梱包費用
三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務のうち次に掲げるものに要する費用(は加算)
イ 当該輸入貨物に組み込まれている材料、部分品又はこれらに類するもの
ロ 当該輸入貨物の生産のために使用された工具、鋳型又はこれらに類するもの
ニ 技術、設計その他当該輸入貨物の生産に関する役務で政令で定めるもの
・輸入貨物の生産のために必要とされた技術、設計、考案、工芸及び意匠であって
本邦以外において開発されたもの(定率法施行令第1条の5第3項)
=イタリアで企画・製造したバックで、イタリアのデザイナーにデザインさせたデザイン料は加算。
四 当該輸入貨物に係る特許権、意匠権、商標権その他これらに類するもの(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く。)で政令で定めるものの使用に伴う対価で、当該輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により直接又は間接に支払われるもの
五 買手による当該輸入貨物の処分又は使用による収益で直接又は間接に売手に帰属するものとされているもの:売手帰属収益
控除項目
仕入書価格にその額が明らかな次のような現実支払価格を構成しない要素が含まれている場合には、控除する。定率法施行令第1条の4
イ 課税物件確定後の据付け、組立て、整備又は技術指導に要する役務の費用
ロ 輸入港到着後の運送に要する運賃、保険料その他運送関連費用
ハ 本邦で課される関税その他の公課
ニ 輸入取引に係る延払金利
加算不要項目の例
・輸入港到着後の貨物の荷卸し料(本邦到着後の費用だから)
・本邦輸入港のTHC (本邦到着後の費用だから)
・荷揚げ港での滞船料 (本邦到着後の費用だから)
・日本での輸入通関費用
・輸入港から保税倉庫までの運送料 (本邦到着後の費用だから)
・通常の貨物海上保険とは別に付保した賠償責任保険の保険料
・保険をかけていない場合は保険料見積もり加算は不要。
・買い手が自己のために行う輸入貨物の検査費用
・輸入取引に関し、買手の管理の下で、買手の計算と危険負担により業務を行う者(買付代理人)
に買手が支払う手数料(非加算)(=買付け手数料は非加算)
輸入貨物の評価申告
(1) ①個別評価申告書(受理番号なし)②包括評価申告書(受理番号つけて1通返却)
(2) 評価申告:輸入貨物の課税価格を決定する際に、輸入申告書に添付される仕入書その他の明細書では明らかにすることができない要素や当該取引に特殊な事情,当該課税価格の計算に必要な事項があること等を記載し、輸入申告時に税関長に提出する申告書。
①評価申告書 I:
インボイス価格と現実支払価格との差異,加算要素,減算要素があり、その額がインボイス等で明らかでない場合→I (税関に提出する書類、明細書等で明らかなら評価申告書Iは不要)。
②評価申告書II:
・売買による輸入取引で~関税定率法4条2項1号~3号に掲げる事情の有無
1.買手による当該輸入貨物の処分又は使用につき制限(買手による輸入貨物の販売が認められる地域についての制限その他の政令で定める制限を除く)がある→II
2.当該輸入貨物の取引価格が当該輸入貨物の売手と買手との間で取引される当該輸入貨物以外の貨物の取引数量又は取引価格に依存して決定されるべき旨の条件その他当該輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が当該輸入貨物の輸入取引に付されている→II
<相殺><肩代わり弁済>
3.買手による当該輸入貨物の処分又は使用による収益で直接又は間接に売手に帰属するものとされているものの額が明らかでない→II
ア)取引関係が特殊関係(売手と買手との間に特殊関係(売手と買手とがその行う事業に関し相互に事業の取締役その他の役員となつていることその他政令て定める売手と買手との間の特殊な関係)がある場合において、当該特殊関係のあることが当該輸入貨物の取引価格に影響を与えていると認められること)により影響を受けていないことの証明できない場合→II
イ)輸入取引(売買)によらない貨物(無償貨物、賃貸借貨物等)→IIとIも。
ウ)変質損傷貨物、航空運送貨物等の特例(航空輸送で輸入されたにもかかわらず、海上輸送されたものとみなして運賃を計算できる特例措置)→IIとIも。
・類似貨物から類推、製造原価から計算など。
③評価申告書不要:
・納税申告にかかわる貨物の関税が無税(免税を含む)または従量税品→評価申告書不要
・100万円以下の小額貨物も評価申告書不要。しかし、一契約を分割したときとか、輸入取引に特別な事情があって価格が影響受けているなど税関長が課税価格決定のために必要とするときは評価申告書必要。
【8】事前教示制度
(1) 輸入関係者が輸入を予定している貨物の関税率表適用上の区分、関税率及び統計品目番号について税関に照会を行い、その回答を受けることができる制度。
(2) 事前教示回答書の有効期間は3年。
(3) メリット:事前に関税率が判る→確かな原価を算出できる、輸入申告時に税番が判明しているため、速やかに通関を行うことがでる。
【11】輸入関税・消費税の納期限延長
原則:関税及び消費税を納付すべき外国貨物については、関税及び消費税が納付された後でなければ輸入許可されず、貨物を保税地域から引き取ることができない。
↓
しかし、それでは輸入通関に時間がかかる場合もあるし、消費税申告は通常の国内取引であれば一定期間後の納付なのに関税は輸入許可前という点、バランスも欠く。
↓
そこで、関税等の納期限延長制度
関税相当分の担保(Cashのみならず人的担保も可)の提供を条件として、輸入許可の日から3か月以内の期限に限り納期限を延長
①個別延長方式→輸入申告毎
②包括延長方式→特定月すべて
③特例輸入者の場合
・特例輸入者制度は、セキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備された者としてあらかじめいずれかの税関長の承認を受けた輸入者(特例輸入者)が、輸入申告と納税申告を分離し、納税申告の前に貨物を引き取ることや輸出入申告官署の自由化を利用した輸入申告が可能となる制度。
特例輸入者制度においては、納税申告の前に貨物を引き取ることが可能となるとともに、貨物が本邦に到着前に輸入申告を行い、輸入の許可を受けることができることから、輸入貨物の一層の迅速かつ円滑な引取りが可能となるほか、貨物の蔵置場所に関わらず、いずれの税関長に対しても輸入申告(輸出入申告官署の自由化を利用した申告)が可能。(出典:税関HP)
・納税前に輸入許可を受けることができ、貨物を保税地域から引き取ることができる。
・輸入時に納税申告をしないから納税に関する審査等が不要になり、引取りまでの時間が短縮。
・納税申告(特例申告)は、輸入許可の属する月の翌月末日までに納税用の申告書(特例申告書)を提出して行い、納税する。
・一本の担保で海上・航空の全税関官署に使用ができる共通担保制度を導入した。また,担保残高に不足が生じた場合に,不足額に相当する担保を追加して提供できる。
輸入消費税の計上
消費税は、ざっくりいうと、企業が仕入れなどの時に支払った消費税と、売上時に預かった消費税との差額を納付する。 この際、「企業が仕入れなどの時に支払った消費税」は国内の仕入先に支払った消費税のみならず、海外から商品などを輸入したときに納めた消費税も消費税の申告で控除できることは意外に知られていない。
特殊関税
【1】 不当廉売関税(アンチ・ダンピング関税)
(1) 不当廉売関税(アンチ・ダンピング関税)の要件:
①ダンピングされた貨物の輸入の事実があること(ダンピング輸入の事実)
②ダンピングされた貨物と同種の貨物を生産している国内産業(国内生産高の相当な割合を占める者)に実質的損害等の事実があること(損害等の事実)
③実質的損害等がダンピングされた貨物の輸入によって引き起こされたという因果関係があること(因果関係)
④国内産業を保護する必要性があること(産業保護の必要性)
(2) 手続き
①政府が調査を実施して課税要件を充たしていることを確認
②原則として国内産業の利害関係者から財務大臣(提出先:財務省関税局関税課)に対し課税申請が行われれば、関係大臣(財務大臣、産業所管大臣及び経済産業大臣)の間で協議のうえ、政府として調査を開始するかどうかを決定する。
・利害関係者:不当廉売された輸入貨物と同種の貨物の生産者、生産者団体、労働組合。
③ 日本の場合、製品・輸出者名または輸出国および「5年以内」の期間が指定され、通常の関税のほかに正常価格(輸出国の国内販売価格等)と不当廉売価格の差額相当額以下の関税を合わせたものが関税として課される。
【2】緊急関税(セーフガード)
輸入貨物の課税価格と同種または類似の国内卸売価格から通常の関税額を控除した額以下の特殊関税を課す。
(1) 一般セーフガード (一般緊急関税、報復関税)
輸入品の急増で国内産業が大きな損害を受けることを回避するため、
①政府が関税を引き上げたり
②輸入量を制限したりして、(cf特別セーフガードは関税引上げのみ)
一時的に輸入品の流入を抑える制度。
WTO(世界貿易機関)のセーフガード協定で世界各国に認められている。
(2) 予見し得ない事情による輸入の増加や重大な損害の発生、国民経済上の緊急の必要性などの条件を満たし、政府が必要だと判断した場合に発動できる。(これらの条件を満たさずに発動すると、WTOが取り消しを命じる場合もある)
(3) 対象:工業製品や農産物など、すべてのもの。
発動期間:原則4年(延長して8年まで)。
・発動条件を満たしているかどうかを、利害関係者(生産者、消費者、商社など)の意見を幅広く聴取し実態調査を行ったうえで、政府が客観的に判断しなければならない。
・措置を行う相手国に対して、同意を求めるための協議を行わなければならない。合意が不成立になった場合は、輸出国には対抗措置(報復措置)をとる権利がある。
・相手国と協議をする場合、その品目の輸出を中止してもらう代わりに別な品目を輸入するなどの、貿易上の補償を適切な形で与えなくてはいけない。
・輸入制限を行う場合には、過去3年間の輸入実績の平均を下回らないような措置を取る必要がある。
・発動期間中は、輸入制限の措置を徐々に和らげていかなければならない。
一般セーフガードと特別セーフガードの比較
一般セーフガード(SG) 特別セーフガード(SSG)
関税引上げ輸入数量制限 関税引上げのみ
対象品目全品目 農産物
4年(8年) 1年
・政令により、貨物を含め対象国を限定せずに無差別に行える。
・関税引き上げ または 輸入数量制限。
・全品目、国内産業に重大な損害。原則4年以内、最大8年以内。
・影響国に補償措置要。
(2) 特別セーフガード(特別緊急関税)
①WTO農業合意によって自由化(関税化)した農産物だけを対象にするもの。関税暫定措置法で規定。
②対象品目の輸入量が一定の量を超えた場合に、自動的に発動される。発動期間も1年足らずと短く、発動の条件も緩い。日本でも豚肉や生糸などで発動された実績がある。 日本:豚肉、生糸で発動あり。
③ 関税引上げのみ。
【3】 相殺関税
(1) 輸出国政府からの補助金を受けた貨物が、補助金の分安く輸入され、日本の生産者が損害を受けた場合、その補助金の額を限度として課される特殊関税。
(2) 申請から2ヶ月以内に調査開始、1年以内に発動を決定
(3) 最大5年間発動可。
【4】差額関税
国内の生産コストなどから基準価格を設け、日本への輸入時点でこれより安い品にはその差額を関税としてかける制度。低価格のものほど高率の関税がかかるシステムになっている。(わが国の輸入豚肉など)
【5】季節関税(Seasonal Duty)
輸入される時期によって適用する税率を異にする関税。バナナ、オレンジなどに適用されている。